完成
見学会

ふかざわ小児科(福岡市東区)

福岡市東区 ふかざわ小児科

未来工房の施設建築

福岡市東区の住宅街のバス道路沿いに建築中の小児科のお話です。木造建築を専門としている未来工房が初めて経験する大きな建物です。経験不足は否めない私たちに、どうして今回の建築を任せてくださることになったのか、院長先生にお話を伺いました。

勉強と研究を続ける、街の小児科

いつもは、小児科医として子どもたちを診ている院長先生ですが、その傍ら、勉強と研究を続け、現在も学会発表、論文執筆、講演活動と多忙をきわめます。開業医として、最善の医療を子どもたちに提供したいという先生の強い意志がなければできないことだと思います。今回の新築も、納得のいく建築業者にたどり着くまで、たくさんの回り道をしてきたそうです。

建築業者を決めるまで

実は5年以上も前から、建築する会社も、土地も探していました、と話される院長先生。平成5年に開業した現在の小児科は、中古の建物を改築したもので30年近くもたち建物の老朽化が目立ってきたそうです。移転か現地で建て替えか・・悩みはたくさんあったそうですが、ずっと揺るがなかったのは「健康な子どもにふさわしい無垢の木と漆喰で建物を作りたい」、そして「絵本に出てきそうな赤い三角屋根に白壁の建物を建てたい」という思いでした。

なぜ、「木と漆喰」か?

「建てるのなら、自然素材を使った手づくり感のある本物の建物を、腕の立つ職人さんに建てて欲しい」と、常々考えていたそうです。
 院長先生と奥様は、建築にもともと興味を持たれていて、旅行先では素敵な建物を見てまわるのが趣味?とのこと。今の日本の家は、外観がモダンで、合成樹脂等人工的な材料が多用されています。

その反面、神戸や横浜、長崎に残る古い洋館、当時の大工が初めて出会った西洋の建物を日本の伝統的な木造技術でつくるという、随所に残る工夫の痕跡、何より大工の手仕事の技術の高さに感動して、何度も訪問している、と話されるご夫婦。また、イギリスの病院を訪問した際には、100年以上も前の建物を、多少の不便があるけど、手直ししながら今も使い続ける様子も目の当たりし、効率だけではなく古い建物に対する愛着に感動されたそうです。

初めから一貫して「無垢の木と漆喰の建物がいい」のは、このような継承される文化としての建物への、深い共感があるからなのでしょう。そんな思いから、自由設計で、無垢の木と漆喰と職人の手仕事で建物をつくっている未来工房を選んでくださったのだと思いました。

未来工房は、断熱材でさえ天然羊毛を使うほど素材に対するこだわりが強く、内装、外観とも素朴で可愛らしく、院長先生の想いに応えてくれそうと感じたそうです。

文化を継承する

奥様が学生の頃住んでいたという京都の町家。ご夫婦がお好きだという古い洋館。現在の小児科のキッズスペースに置いてあるという、本物のポニーの鞍が置かれた木馬、汽車の木製ベンチ(もちろんどれも新しい医院にお引越しします!)。手仕事で作られたそのどれにも、ご夫婦の感動と愛着が詰まっています。今回の建築も同様に考えていただいているのでしょう、単なる医療の場をつくるのではない、と話される院長先生。「もう1回行きたいと思えるような、これが小児科?おもしろい!と訪れる人を感動させるような、そんな建物を作りたい」。日本人がなくしてしまった建物に対する愛情を取り戻したい、そんな思いさえ感じさせる院長先生の言葉に、改めて今回の建築が誇らしく思え、この地域で記憶に残り、文化となる建物を、しっかりとつくる。そう決意を新たにしました。

職人の技術を発揮できる「場」

まだ建築の途中ですが、現場の工事で印象に残っていることをお聞きすると、院長先生は、間髪入れず「大工さんの仕事!あれは、プライドをもってできる仕事ですね」と、目を輝かせて答えてくださいました。親子、兄弟で大工の道に入り、親方のもとで技術を受け継ぎ、建物という文化を後世に残すのが大工の仕事。しかし、職人の技術を発揮できる「場」がなければ、技術が継承されることはないのです。在来工法による木造三階建ての 「新ふかざわ小児科」がその「場」になったこと、その意味でも、院長先生が大工の仕事ぶりを喜んでくださっていることは、建築に携わるものとして、うれしい驚きでした。現在内装工事が進み素晴らしい屋根組み全体は見えなくなりましたが、完成後も待合室の吹き抜けから一部を見ることができます。

小児科という日常的に親子が訪れる場所が、その機能以上に、地域のランドマークになり、地域の子どもたちの記憶に残るように、そして後世に受け継がれていく建物になってほしいという思いを新たにしました。

大工工事から4ヶ月、漆喰を塗る左官さん、さらに何人もの職人の
手により完成し、令和3年1月6日に移転オープンされました。

ふかざわ小児科

院長 深澤満

ふかざわ小児科は、幸いにも多くのお母さんがたから支持される小児科になることができました。これは、「勉強と研究を続ける小児科医」でありたいという私の姿勢を評価していただいた結果だと思っています。しかし、小児医療は常に進歩しています。子どもたちに最良の医療を提供するために、これからもできる限りの努力を続けていくつもりです。

【自己紹介】
福岡市生まれ。湯川秀樹博士にあこがれ、京都大学理学部および大学院博士課程で理論物理学を研究。その後、もうひとつの夢だった小児科医になるために大阪大学医学部に編入学。
福岡市立こども病院小児科医長、九州大学医学部小児科講師、病棟医長などを経て、平成5年に小児科医院を開設。

【所属学会・施設認定・資格】
・日本小児科学会
・日本小児科医会
・日本外来小児科学会
・日本アレルギー学会
・日本小児アレルギー学会
・日本小児耳鼻咽喉科学会
・日本小児皮膚科学会
・食物アレルギー負荷試験認定施設
・九州大学医学部小児科臨床実習施設
・福岡大学医学部臨床実習施設
・医学博士・学位論文 小児循環器に関する主な研究
・小児科学会認定 小児科専門医