福岡で自然素材の注文住宅をお考えなら、
木の家づくりの【未来工房】へ

思惑と偶然が生み出す、土偶たちの視線


黒い部分は焼き切れなかった部分。「もう一度焼けば消えるけど、これはこれでいいかな」

武雄市の少し山間の工房で、地の土を捏ね、野焼きで作陶されている陶芸家 三浦宏基さんを訪ねました。

以前、作陶をしていたという自宅横の小屋には、人や動物をモチーフにした土偶たちが整然と並びます。そのフォルムはどれも独創的で、顔を覗けば皆違う表情で見つめ返します。

絵を描いていた父親の影響か、幼い頃から絵を描くことが好きだったという三浦さん。興味のあった「ろくろ」を学ぶために進んだ、有田窯業大学校で陶芸の基礎を学び、在学中から伝統工芸士の元を5年ほど通い詰め、うすくちの茶碗などストイックに技術を修得。しかし、「今は、量産型で成形自体は機械化されているのがほとんど。ろくろを回し作る仕事はありませんでした」と三浦さん。波佐見焼窯元で量産の器生産に従事しながら、仕事が終わった後は自分の思うままに作陶に打ち込んだそうです。

黒い部分は焼き切れなかった部分。「もう一度焼けば消えるけど、これはこれでいいかな」


箱は作品の大きさに合わせ奥様が作り、三浦さんが中身の絵を描く

勤め先の工場の地下で始めた土偶作り。手びねりの要領でひも状にした土を、積み重ねては乾燥させてを繰り返し約2ヶ月。初めての作品は大きくて重く、仲間に手を借りながら地下から運び出しました。「今は、大きなものは分けて作るようにしてます。重たくて運べないんで」と笑いながら当時を振り返ります。

 

土を捏ねていく中で形が生まれ、指あとも小さなひびも表情の一つ。顔料を練り込みつけられた色、焼き具合で偶然できる煤けた黒も作品の大切な一部になっています。2020年夏、陶器では出せない、「野焼きの素朴さで勝負がしたい」と独立。自身の工房で日々作陶されています。

木々が囲む工房で

工房では、緑の中あちこちに置かれた作品たちが出迎えてくれます。

野焼きはとても原始的で、風が少なく翌日も晴れの日を見極め、夕方から夜にかけて火を入れ焼きます。「縄文時代、弥生時代の焼き方でもやってみたんですよ」と三浦さん。レンガを積み、木や藁、籾殻などを詰め込むなど、試行錯誤を重ね、たどり着いた焼き方。しかし、今でも開けてみるまでは焼き上がりはわからないと言います。


最近イチオシのマトリョーシカ土偶。次はホタテの貝殻に合うサイズを作る予定

工房にはガス窯もあり、ろくろを回し皿や鉢なども作られています。無邪気に勢いよく描かれた線は、力強くもおおらかで、野焼きの作品とは一味違う素朴さを醸し出しています。

野焼きベースの作陶から、今は再び陶器の面白さに惹かれているという三浦さん。伝統的手法を学んだからこそ、我流にアレンジできる。独創的で愛嬌のある野焼きの作風が混ざり合いながら、新しい三浦さんの世界が広がっていくことでしょう。これからも、どんな作品達に出会えるか楽しみです。