完成
見学会

余白を楽しむ

福岡県那珂川市 M様邸

余白のある住まいからのスタート。

今回お邪魔したのは、新築時の完成見学会の際のご案内に
「余白のある住まい」という言葉で表されたM様邸。
新築時は造りつけの収納などもなく、建具さえも最低限の数でした。
そんなM様邸の「余白」は、1年9ヶ月の年月で、どのように変化したのでしょうか?

まず初めに目に入るのは、リビングから繋がるご主人作のウッドデッキ。
職人仕事だと勘違いしてしまうほど、丁寧に、そして美しく作られていました。
同行していた当時の担当設計や現場監督も、わぁっと感嘆の声をあげてしまう仕上がりです。
忙しい日々の合間を縫って、5ヶ月かけて作り上げたそうで、
「やっと外に洗濯物が干せるようになりました。」と奥様も嬉しそう。
しかしこれで完成ではありません。次はこのデッキに網戸を付けて、庭には小屋を作って…
と話し出すご主人に、配置や見え方など、スタッフのアドバイスにも熱が入ります。
一緒に家づくりをしてきた「チーム」の感覚が、戻りつつあるようでした。

(左から、M様、現場監督の三城、設計の片多)

室内に入ると、スタッフがこぞって「いいなぁ~」と声を漏らしてしまうような
家具や建具、雑貨に目を奪われます。骨董市で集めたものや、
ご実家の蔵に眠っていたもの、そしてご主人が新たに作ったもの。
骨董市やご実家の蔵に眠っていた古い家具も、ご主人の手によって
補修が施されています。時代も作り手も違うのに、違和感は全く感じられません。
初めは遠慮がちだったご主人も、感心しきりのスタッフに、次第に
「ここも見てください!」といきいきとした表情を見せてくださいました。

それぞれの役割を楽しんで暮らす

「家づくりを考え始めるよりも前から、いつか使いたいと思ってたくさん集めてたんです。
まだ使い切れていないので、これからですね。」
ご主人の作業場である工房には、たくさんの材料や工具が収まっています。
興味津々のスタッフに、「やっぱり男の人は好きなんですねぇ。」
と遠くから眺める奥様。ご主人のもの作りにはノータッチなのかと思いきや、
ここに何がどんな風に欲しい、とオーダーするのは実は奥様の役割なのだとか。
和風とも洋風とも表しがたい室内の雰囲気は、奥様のセンスでまとめられたものなのでした。

ご主人に、一番大変だった・難しかったものは?と問いかけると、
「一番楽しかったのは下足入れですね。」と即答。
もとは桐たんすだったものを、開き方から何から全くの別物に仕上げるのは、
大変だとか難しいとかではなく、とても楽しかったのだと、思いの深さが伝わってきました。
こうしてひとつひとつ手間も時間もかけながら、M様邸の余白は少しずつ埋められています。
ひと続きの空間にした子ども部屋の今後の間仕切りなど、
「やりがいのあるところがまだまだたくさん残ってるんです。」と嬉しそうなM様です。

使えるものは使い切る

取材中、ご夫婦の口から何度もこぼれた、「使えるものは使い切る」という言葉。
その言葉通り、下足入れになった桐たんすのその他のパーツは、
分解して収納にしたり、キッチンの棚にしたりと、余すところなくフル活用されていました。
今は何でもすぐに手に入る時代で、それはとても便利なことですが、
大事に使い、そして受け継いでいくことの大切さを、改めて感じられた一日でした。

(取材/2018年秋)