完成
見学会

庭と家とが、この地に根付く。

佐賀県神埼市 T様邸

例年より早い梅雨入りの数日後、晴れ間がのぞいたこの日のT邸。2004年に完成したT邸は築17年を迎え、外壁の板張り部分はシルバーグレーに変化しています。「この変化を汚いと思われる人もいますが、私にはこれが格好良いんです」と言葉は淡々としながらも、表情には誇らしさが感じられます。

家づくりのスタートは外観からだったというT邸は、散歩をする人の多い土手のそばにあります。庭も家も突然そこに現れたような違和感を持たせず、以前からあったかのような佇まいかつ、通行人の目線が気にならないよう考えたそう。当初から大きめの庭木を配置したのもその工夫のひとつです。17年の時を経てそれらはますます大きく育ち、晴れた日は程よい木陰を作ります。家と同じくシルバーグレーが美しい目隠しのウッドフェンスもお手製。台風の際には飛ばされないよう、簡単に取り外せるつくりにできるのもDIYならではです。

暮らしに合わせ変化させていく

17年の月日によって深みの出た室内は、ひとつひとつの家具が定位置にすっぽりと収まり、すっきりとした印象に。初めから置くことを決めていたソファ以外は、入居後に少しずつ気に入ったものを揃えたのだそう。もともと、新築時から流行りや最新のものではなく、長く大切にできるものを選ぶようにしていたというT邸。「子どもの成長や暮らし方、好みの変化に合わせてその都度カスタマイズできるよう、造りつけの収納は少なめにしました。」

カスタマイズできるのはそれだけではありません。新築後、1年ほどかけて自作したという小屋は、初めはバイクやキャンプ用品の収納に、次は自転車小屋に、そして最近は外回りの掃除道具などが増えてきたといいます。また当初は吹き抜けだったスペースを利用して子ども部屋を広げたのが7年程前のこと。子どもたちがプライベートスペースを持てるよう、中央の二段ベッドを間仕切り代わりに、両側にそれぞれのスペースを確保しました。3年前には紙クロスだった壁を漆喰の塗り壁にしたり、天窓をつけたりと、T邸では間取りや設えも暮らしに合わせて作り変えています。最近では、自身でキッチンと子ども部屋の壁紙を一面だけ塗装するプチリフォームも。優しい色合いのグリーンとブルーはご家族にも好評だったと嬉しそうに話します。

「時をためる」ということ

「この数年、映画人生フルーツをきっかけに『時をためる』ということについて考えるようになりました。映画を見た直後は『時をためる』という感覚がよく分からなかったんですが、他のスタッフと話しているうちに、そういうことか、と思うようになりました。」本物の木を使った家や家具が使い込まれた様子に、時がたまっているなぁと感じるのだそう。「特にウッドデッキの階段部分は、角ばっていたところがいつの間にか削れて丸みを帯び、新築時には出せない味わいがありますね。」

変化していく家の一方で、案外変わらないのが家族の居場所なのだとか。大きくなった子どもたちも、自室にこもるよりリビングダイニングに集まることがほとんどなのだそうです。幼いころからそこで過ごしていたことが、今も当たり前に続いているのは、変わらない居心地の良さと、ご家族の仲の良さがあってのことなのでしょう。