スタートラインたちばな(福岡県八女市)
わが家のようなグループホーム
八女市の街道沿いに立つ、薪ストーブの煙突が印象的な建物。
ここは、障がいのある方々が共同で暮らすグループホーム「スタートラインたちばな」です。木の香りに包まれたやさしい空間は、どこか個人の住まいのようなぬくもりにあふれています。

この場所をつくったのは、代表の村尾眞治さん。精神科の看護師として長く病院に勤めるなかで、「本当に必要なのは、地域のなかで心を回復していける場所ではないか」と感じるようになりました。
その思いを胸に、地域看護について学びを深め、イタリアの精神医療の現場も視察。病院に頼りすぎず、社会の中で自分らしさを取り戻すという考え方に強く共感したといいます。

「まずは、安心して暮らせる場所を」との思いから、2023年に「スタートラインたちばな」が誕生しました。設計と施工は、自然素材にこだわる地元の未来工房が担当。以前からその家づくりに魅力を感じていた村尾さんが、「少し費用がかかっても、住む人がくつろげる家を」と依頼されました。

建物は、敷地の北側に流れる川や南側に見える山の風景を生かし、風通しのよい開放的なプラン。1階の共有スペースは、地域の人とも交流できるよう開かれたつくりにしました。情緒を安定させ、集中力アップやリラックス効果のある木材をふんだんに使うことで、わが家のようにくつろいで欲しいという思いが込められています。

入居者やスタッフからは、「木の香りに癒される」「薪ストーブのあたたかさが心地よい」と好評。村尾さんは、「ここでの暮らしを通して、少しずつ生活リズムを整え、自信を取り戻していってほしい。そして、いずれは一人暮らしなど自分の道を歩めるようにサポートしていきたい」と話します。