大切にしたいものを選びながら暮らす。
佐賀県多久市 T様邸
家を建てたのは60歳の時。
家づくりで問われたのは、「どう暮らしたいか」
まだ日差しに夏の名残がある10月初め、佐賀県多久市のT様邸に伺いました。
「1日のはじまりは、家中の窓を開け、風を入れること」とおっしゃる奥様。
家を囲む豊かな自然から、家中に心地よい風が吹き抜けています。
「プランを立てるとき、設計士の方が何度も現地を訪れて、風向きを確認してくれたんですよ」とお話くださいました。
T様の家づくりが始まったのは、あと数年で定年という人生の一区切りを迎える頃。
新聞広告で見かけた、未来工房の「小さい家の勧め」に惹かれ、展示場へと足を運びました。
そこで出会った木の家アドバイザーに「私たちは箱を作るのではなく、生き方を提案したい」
と言われたことが印象的で、「建てるまでの1年間、これからどんな生き方、暮らしをしたいかを
夫婦で話し合って、勉強して、本当に、考えさせられました」と当時のことを振り返り、懐かしそう。
今までは休みの度に出かけていたけれど、「これからは家で過ごす時間を楽しみたい。そんな家にしよう」と家づくりが始まりました。
はじめは希望をどんどん出し、グレードの高いものを選んでいましたが、これからの人生、暮らしに本当に必要なものかを考え、
残したいものを絞り込み、そぎ落としていったとのこと。
「元々の素材がいいからなのか、出来栄えも暮らし良さも下がらなかったね」と揃って頷かれるお二人。
“わたしだけ”の場所
T様邸では、昔からある箪笥などの家具を大切にお使いになられています。
「新しい家だから家具も新調したくなったけどもったいなくて。今あるものを連れて行くために、
家具の大きさを測って収まるように設計してもらいました。風通しも良くできたし、案外古い家具も馴染むものですね」と奥様。
少し広めのウォークインクローゼットには、箪笥とお子さんのおさがりという折り畳み式の学習机がぴったり並んでいます。
学習机は、書き物が多いという奥様の場所。専用の場所があると、日常から離れ思いにふけることができ、必要なものが揃っているので作業も捗ります。
カメラがご趣味のご主人の部屋には、カメラの保管庫に、撮った写真を編集、管理するパソコンやアルバム、本などが集まり、
昔使っていた無線機など、ワクワクするものでいっぱいです。見せていただいたアルバムには、旅行先の様子などご家族の思い出が丁寧にまとめられています。
選択する目を養う。
T様邸では、年に一度、テーブルなどの家具を動かし、床を磨かれています。
「9月くらいから今日は台所、次はリビングという感じで、少しずつ。」と部屋を見回す奥様。
また、食器棚や押入れ、箪笥の中も、全部取り出して『使い切れているか、不要なものはないか』を確認。
使っていないものは処分したり、お知り合いに引き取っていただいているそうです。
「基準は高価なものというわけではなく、自分が大切にしたいと思うもの。物を増やす時は、使い切った時。
一つ買ったら一つ捨てるようにしています」と、物との向き合い方を教えてくださいました。
シンク前の窓の上には、奥様が中学生のころに夢中になった『シルクロード』にちなみ集めたというラクダが整列。
「この棚は、はじめからラクダを並べるためのもの。現場監督はちょっと驚いてましたけど。」と愉快そう。
遊びに来たお孫さんが、夫妻の寝室で寝転んだり、台所で宿題したり、それぞれ好きな場所で過ごすというT様邸。
自分たちに必要なものを見極め、好きなもの、場所を大切にしながら重ねる暮らしそのものが、
家中に溢れる心地良さを生み出している、そう感じたひと時でした。